










損失回避欲求
人は損をすることに大きな不安を感じます。
行動経済学者のダニエル・カーネマンらが提唱する「プロスペクト理論」によると、“損したくない気持ちは、得したい気持ちより2.25倍も強い”とされています。
下記のような営業をかけられたと想像してみてください。
どちらがより「買わなきゃ」という印象を受けますか?
例1) 宝くじを買えば、一億円当たるチャンスが手に入りますよ。 宝くじを買わないと、絶対に一億円は手に入りませんよ。 例2) ドラム式洗濯機を買えば、有益に使える時間が増えますよ。 ドラム式洗濯機を買わないと、プライベートの時間が奪われ続けますよ。
イェール大学のローリー・サントスの実験によれば、サルやチンパンジーにも「損失回避欲求」があることが分かっています。
つまり、損失回避は3500万年前から続く根源的な心理ということです。
もし今あなたが不安を抱えているのなら、その裏には必ずと言っていいほど「損をする恐怖」があるはずです。
今回はそんな損失回避の心理を活用した習慣化テクニックを紹介します。






コンコルド効果
損失回避による認知のゆがみで有名なのが「コンコルド効果」です。
別名「サンクコストバイアス」とも呼ばれています。
分かりやすい例がギャンブルです。
返ってくる見込みが低いにもかかわらず、“失った分を取り返そう”と躍起になってしまった経験はないでしょうか。
このような“コストを惜しんでさらにコストを払ってしまう”心理を「コンコルド効果」と言います。
この心理を逆手に取ることもできます。
勉強や筋トレなど、習慣化したい行動がある場合は、敢えて初期コストを払うことで「今やめるのはもったいない」という意識に変換することができるのです。
例1) 勉強に集中できるよう、高価なゲーミングチェアを購入した。 もう勉強の熱は冷めてしまったが、せっかく買ったのだから、少しは勉強しなきゃ損だろう。 例2) 私は他の人よりも多くの時間を勉強にあててきた。 ここで勉強を中断し、成績が落ちてしまってはもったいない。








能力を最大化させる目標設定
もしすでに習慣化できていて、具体的な目標があるのなら、より高い目標を立てましょう。
具体的かつ難易度が高い目標は、人の能力を最大化させることができます。
例)週1回のランニングで20kmを走れるようになった。 低い目標:25km走れるようになろう。 高い目標:来年、フルマラソン(42.2km)への参加を目指そう。
ただし、「これから何かを始める」「悪癖を断ちたい」という場合は、逆にスモールステップから始めるべきです。
【やる気の燃料】成長実感テクニック「プログレス・アウェアネス」【10話】
プログレス・アウェアネスとは>直訳すると、「前進に気づく」という意味です。人は「自分がどれくらい進んでいるのか」を確認すると、集中力やモチベーションがアップします。SNS等への記録は、まさに自分の前進...






損失回避でやる気を高める
<具体的な目標>
- やるべきことが分かっているのに、やる気が出ない
- ついやってしまう悪癖を断ちたい
このような時は「why思考+損失回避」で考えるようにしましょう。
具体的には、「なぜやるべきなのか」+「やらないと何を失うのか」を考えるということです。
例)筋トレを習慣化したい なぜやるべきなのか:自信をもって好きな人に告白するため やらないと何を失うのか:好きな人と付き合うチャンス
これらの自問自答を行うことで、やる気や自制心を高めることができます。
<曖昧・難しい目標>
- 運の要素もあって、達成できるか分からない
- 初めての挑戦のため、どんな障害があるかよく分からない
このような目標に取り組むなら「what思考」を活用しましょう。
「何をすべきか」を考え、ToDoリストを作ったり、優先順位をつけることなどが挙げられます。
例)彼女が欲しい
何をすべきなのか:筋トレ
ToDoリスト
☑モテる方法を検索
☑合コンに参加する
☐ナンパしてみる
「what思考」には、“木を見て森を見ず”になりやすいなどの弱点があるものの、複雑な道のりを着実に進みたいときには抜群の効果を発揮します。



現状維持バイアス
「現状維持バイアス」は、大きな変化や変化によるリスクを恐れる心理です。
例) ・毎日5時間勉強する目標を立てたが、これからそんな日常が続くことが不安 ・年収1千万になりたいけれど、実際にそのための計画は立てられていない。
生物にとって、自分たちが住んでいる土地を離れて未開の地に行くことは大きなリスクを伴います。
変化を恐れ、リスクに敏感に反応することは、何億何千万年の歴史の中で重要な生存戦略だったことでしょう。
それは遺伝子レベルで組み込まれた心理と言えます。
上記の例のように、大きな変化が伴う目標には「現状維持バイアス」が働いてしまいます。
これから何かを習慣化したいという場合は、スモールステップでも毎日継続できるようにすることが重要です。
徐々に負荷を大きくしていき、そのような状況を常態化してしまえば、むしろやめることに「現状維持バイアス」を働かせることもできます。
また「マジックナンバー4」を使うことで、より継続しやすい目標設定が可能です。
【挫折を乗り越える】②自己否定から自分を守る「セルフコンパッション」【9話】
①挫折感のメタ認知>自分を責めることをやめ、状況を改善するには、まず自分が受けているストレスを認知する必要があります。そのために使うテクニックが「インターベンション・ブレスレット」です。挫折感を感じた...




<参考図書>